┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓ ┃さ┃┃く┃┃ら┃┃日┃┃記┃ 〜ボクとさくらのほのぼの劇場〜 ┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛ ============================================================================= 3月4日「Thanks」 朝からしとしとと雨が降り続く土曜日でした。 お昼ちょっと前、ボクは仕事部屋で片づけ物をしていました。 すると、リビングで掃除機をかけてたカミさんがやってきてこう言うのです。 「なんだかさくらがおかしい。掃除しようとしてカゴを動かしても起きてこないし、 いくら名前を呼んでも反応がない。」 さくらのやつ、どうせ眠りこけてるだけだろう。心配させやがって。 なんて思いながらボクも一応見にいってみることにしました。 いつもだったら名前を呼ぶと、フガフガもぞもぞしながら寝ぼけまなこをのぞかすサクちゃんが、 確かに今回は知らんぷりです。 まさかねえ...と思いつつ静かにじっと覗いてみると、かすかに呼吸をしている様子がうかがえるので、 ちょっと安心しました。 でも、いくらなんでも反応がなさすぎる。と、ふたりで呼びかけてみますがやはりダメです。 意を決したボクは、驚かせてはいけないと、ゆっくり両手でさくらを抱き上げました。 しかし、それでもさくらはボクの思いとは裏腹になんの反応も示さずぐったりとして、 力なくうずくまっているだけです。 ただ、呼吸だけは続けており、温かな感触が手の平から伝わってきます。 どうしちゃったんだ?冬眠でも始めてしまったのか? 確か本に、冬眠はものすごく体力をつかうものだからとても危険だ、と書いてありました。 「このまま起きなくなったら大変だ!」 僕らはどうしたらよいのか分からず、カイロで温めてみたり、 「さくら、さくら、起きてよ。サクちゃん!」 声をかけながらさすってみたり。 するとさくらは、それに応えるように時折ひくひくひくっと息をつき、 飛び出ちゃうんじゃないかと思うほどに大きく大きく目を見開いたあと、 僕たちを見つめ、耳をひくひくっ、ひげをサワサワッ、軽く伸びをしました。 「やった!さくら起きた!よかった〜。」 よろこぶ僕らの姿を見て安心したのか、さくらはゆっくりと目を閉じました。 その顔はとても安らかです。 それと同時に僕の手の中からぬくもりが消えていくのがわかります。 「さくら、死んじゃったかもしれない。」 僕の目には涙が溢れ、曇ってよく見えません。 それからどれくらいの間そうしていたのか、よく憶えてはいません。 翌日の日曜は、昨日とはうって変わって朝からよく晴れ、 窓から差し込む春の日差しがとても暖かです。 僕らはみかんと一緒に、いつも散歩に行く近くの公園へ出掛けました。 そこで、その公園を見渡せるよく日の当たる木の根元に穴を掘ってさくらを埋め、 隣に小さな黄色い花を植えてあげました。 たくさんの楽しい想い出をつくってくれたさくら。 僕が作家として独立しようとしていた時期、また、大阪での新しい生活のはじまりと、 ちょうど転機となるときをともに過ごしてくれました。 さくらのおかげでどれだけ気が和んだことでしょう。 こんな気持ちになるのは久しぶりです。 どうもありがとう。 トップページへ │ 前へ │ |